この前借りてきたラブレスのラムユーティリティのシースを観察してみた。
猟の現場ではろくに拭う事もなく、血糊の付いたままシースに収めてる。
いくらか沈み込んでしまって抜き差し方向には若干ガタがあるが、横方向のガタはなく差し込めばしっかり固定される。
おそらくハンドル後ろ側のボルトが僅かにシースに隠れるかどうかのところが正規の位置だったのだと思う。沈み込んではいるがエッジの先端と中子の間には余裕があって、エッジが中子に当たってはいない。
長年使っていると指す時にどうしてもエッジで傷をつけてしまう。
ラブレスは案外毛羽立った床面の革を使ってる事がある。
毛羽立った床面は血糊の付いたまま収めても張り付く事がない。エッジで切ってしまっても傷が目立たない利点もある。
内側に銀面を張ったシースは自分は実用には疑問に思っている。
銀面が非常に丈夫で伸びにくいが、床面はしなやかなのが特徴。ポーチタイプのシースは革の弾力でナイフが抜けない様に保持しているのだが、一般的なヌメ革は銀面の伸縮もあって全体的にフニャフニャと剛性がない事が多い。
ダブルショルダーは銀面は伸縮は少なく、床面のしなやかさで保持する様になっている。そのためシース全体の剛性は非常に高く型崩れしにくい。
表側はダブルステッチだが裏はシングルになっている。これはミシンで縫ってるため厚みとベルトループが邪魔になるためそうしているらしい。よく見ると裏面側の接着の剥離が見られる。やはりできる事なら内側のステッチも裏表通して縫った方がいい様に思う。縫い締める事で強度も上がると思う。
カスタムメーカーの一部はナンポウと呼ばれる合成皮革の靴底材を使う人もいる。
ベンズもナンポウも一長一短があるのだろう。
なるべく嵩張らない様にと、収めてもガタつきがない様にしているのだと思う。
おそらくこのシースも油脂が十分に染み込ませてあるのだと思う。
古いナイフのシースでカサカサになってしまうものをよく見るが、染み込ませてある油脂の問題もあるのだと思う。油脂は酸化しにく抜けにくいものを使う必要がある。
乾性油を使って繊維を固める事でヘタリにくいシースにする方法もある様だが、繊維を固めてしまうのは限界を超えて変形した時、絡み合った繊維が切れてしまう事がある。シースに硬化剤や乾性油で固めるのは自分は疑問に思っている。
ラブレスのシースを見ていると所謂レザークラフトとは違う様な気がする。
美しさや作りの丁寧さというより、実用を重視して道具である事に徹して作っていたのだと思う。