2023年1月16日月曜日

やっと撃てた

昨日の出猟。この日は比較的標高の高い所の猟場をやった。
この時期には珍しく暖かい。霧が出ていて見通しが効きにくい。
斜面を見下ろすタツマに入る。獲物は横切るか向こうから登ってくる。
タツマの配置が終わり勢子が動き出す。しばらくして勢子の一人が鹿を見つけて発砲した。距離は遠かったが、中ったらしく鳴き声がしたという。近くのタツマにいた組長も聞いたというので間違いはないだろう。しかし追ってみるが姿は見えなかったらしい。
暫くは獲物の気配もなかったが、時折ガサガサと音が聞こえる。しかし霧が邪魔で全く見えない。
また暫く待っていると、不意に気配を感じた。撃てる準備をして構えていると、下の方の霧の中に鹿の影が見えた。

50mぐらいだろうか。ゆっくりと左から来て横切ろうとしている。
正面の立木の向こうで一瞬止まって首だけ出した。警戒している様だ。
もうちょっと出たら撃とうと待つ。ゆっくり進みだして、姿が完全に見えたところで引き金を引いた。
瞬間鹿は方向を変えて斜面の下に向かった。二の矢を撃った。以前持っていた410番のレバーアクションは引っかかって二の矢が撃てない事があったが、30-30の本物(?)は滑らかに排莢装填ができた。やっぱりいいなw
しかし鹿は走って行ってしまい、霧で見えなくなった。初矢は中ったのは分かった。いつもの癖で、一番中心の腹を狙ったのがいけなかった。落ち着いて首根っこでも狙えばよかった・・・
すぐにでも確認に行きたかったが、霧がたちこめていたのでやめた。

引き続き警戒していると、すぐ上のタツマから盛大に銃声が聞こえた。
猪が4頭程列になって出てきたらしい。悲鳴が聞こえたとの事で一頭には確実に中っている。
勢子も来たのでタツマと一緒に血痕を辿ったが、結局見つける事は出来なかった・・・

撃った鹿はどうなった?
勢子が来たので見てもらったら、自分が撃つ手前に血痕があるとの事。どうやら序盤勢子が撃ったのが中っていたらしい。

勢子と行き会って自分の撃ったところから血痕を辿ったら、50m程下の方に落ちていた。
撃った時は雌鹿だと思ったが、小さな角の若い雄鹿だった。
よく見ると三つ弾痕があった。勢子の12番のスラッグはお尻の方に中っていて、致命傷にはなってなかった様だ。
自分の撃った初矢は狙い通りに腹の真ん中に中っていた。二の矢は下腹に中っていた。散弾銃の頃は逃げる鹿を撃っても中ったためしがなかったのだがw


斜面が急で丸のままの回収は大変なので、現場で解体して回収した。
解体中に気がついたが、片方の後ろ足の先がなかった。くくり罠に掛った事があるのだろう。傷はきれいに治っていた。

今猟期初めて獲物を見て、発砲できたのも初めてだった。
ダミーカートリッジで回転の具合は分っていても、実際連発で撃った事がなかったので排莢装填がちゃんとできて安心した。射場は基本一発づつしか撃てないので、連射の具合が確認できないのが不便だ。
下のタツマの話では「30-30は音が軽いな。410みたいだw」との事だった。30-06などから比べると、大分威力が小さいのかもしれない。「しかし連射は速いなw」とも言っていた。ボルトでは連射できるか不安だ・・・次はサコーの308を使ってみようw

2023年1月12日木曜日

CV134を使って分かった事



この前使ったCV134は色々と面白い事が分かった。
 

V含有の多い鋼材は真空炉だと硬さが十分に出ない事は以前考察した。気体冷却では冷却速度が間に合わないためと思われる。
これはもしかしたら粉末鋼固有の問題なのかもしれない。今回CV134をはじめて使ったが、V含有量が多いにもかかわらず、硬さは真空炉でも十分に出ている様だった。炭素量の影響もあるが、それでもC/Vの比率でいったらSPGⅡの方が大きい。単純に炭素量が多いからという訳でもでもなさそうだ。

高合金の溶製鋼は一次(共晶)炭化物の問題がある。

大抵の粉末鋼は組織観察すると3μm前後の炭化物が均一に分布している。自分はこの炭化物が溶製鋼における一次炭化物に相当するものだと思っていた。
しかし観察していて粉末鋼は熱処理時にこの炭化物が固溶して小さくなっている事が分かった。
粉末鋼の場合は溶製鋼の様な一次炭化物と二次(共析)炭化物の明確な区別がないのかもしれない。


先の考察の通りV含有量が多くなると臨界冷却速度が速くなるのは、Vの炭化物傾向が大きい事が原因になっている。冷却速度が遅いとVと炭素が結びついてVの炭化物が析出するからだ。
析出には種になる炭化物があると促進される。粉末鋼の場合、均一に分布した炭化物が核になって析出しやすいのだと思われる。基地中に固溶した炭素が食われるので、硬さが出にくくなる訳だ。
溶製鋼のCV134の場合、Vの炭化物は大部分が一次炭化物として存在するので、冷却速度が遅くても核にならない。したがって基地に固溶した炭素が食われる事がないので、十分な硬さが出るのだと思う。

粉末鋼ってのは焼入れの熱処理に際して炭化物の固溶はしやすいが、冷却時には析出のしやすいものなのかもしれない。

固溶のしやすさでいうとATS34よりRWL34の方が同一条件で熱処理した場合、硬さがHRcで1~2ほど高くなる。焼入れ性がいいといえる。V量が少ない粉末鋼は大方この様な特性があるみたいだ。

Vなどの炭化物傾向の大きい合金元素を含む粉末鋼は注意が必要な事が分かった。おそらくWやNbなども多く含むと同じ様な問題が出てくると思われる。これら炭化物傾向の大きな元素を含有する場合は、焼入れのオーステナイト化温度を高くする必要もある。

究極的にはソルトバスを使って冷却は油冷を指定してやればいいのかもしれない。
しかしS&Rの様な削り出しでは、油冷した場合大きく歪むので、あとの加工が厄介になる。
歪みを見越して厚く残して、熱処理後に削って調整するか?・・・しかし研削熱が掛かるので低温焼き戻しの場合はいい事がない様に思う。

ナイフ鋼材オタクのブログには電気炉を使って「プレートクエンチ」というアルミ板に挟んで冷却する方法が書かれている。おそらく冷却速度は空冷と油冷の間ぐらいになるのだと思う。
熱処理条件を自由に設定できるのも魅力だが、設備費を稼働費を考えるとどうなんだろうか・・・結局のところサブゼロ付きで2時間二回の高温焼き戻しをやる真空炉の熱処理が、1本千円ちょっとでやってもらえるのは格安なのかもしれない。

硬い炭化物がジャリジャリ入った鋼種ではあるが、D2などよりは硬さもあって靭性にも有利なのかもしれない。
繊細な刃付けは無理かもしれないが、タフな鋼種というのは確かなんだと思う。