昨年の関の刃物まつりで買ってきた14C28Nを使ってみる。
10C28Mo2との違いが知りたいので、両方で作ってみる事にした。
一番の疑問は焼入れのオーステナイト化の温度が1080℃で行けるという事。
オーバーヒートにならないのか?
アレイマの人に聞くと組織の状態が鍵らしい。

若干炭素量が多い事と窒素を少量含有しているので、10C28Mo2よりは硬さは高くなるとは予想していたが、思った以上に高かった。
13%Crの時、Cは0.8%以下になると一次(共晶)炭化物はなくなる。420の系統がこれに相当する。
CRMO7、10C28Mo2はこの系統になる。14C28Nもこれに入る。
420はC量が少ないためにオーステナイト化の温度は低めになるのだが、CRMO7は1%程度Moがあるためにオーステナイト化温度が高めになってる。
14C28NはMoの様な炭化物生成傾向の高い合金元素は含まれないので、オーステナイト化温度は低めだと思っていた。
以下は顕微鏡観察した結果。
600倍は横の画角がちょうど100μmになる。
14C28N マトリックスアイダCRMO7の条件 150倍
14C28N 生材 600倍
10C28Mo2 マトリックスアイダCRMO7の条件 600倍
10C28Mo2と比較すると、熱処理後は幾分14C28Nの方が炭化物が大きく密度も高い様だ。溶け残った炭化物も多い。オーステナイト化が高くても過熱にならない理由は、この辺にあるのかもしれない。
10C28Mo2,14C28Nとも生材と比較すると、熱処理後は炭化物が固溶している様子がわかる。10C28Mo2は溶け込む量が多く、ぎりぎりオーバーヒートになってない感もある。
エッチングした時の感触では、10C28Mo2の方が若干耐食性がいい様だ。
マトリックスアイダの熱処理条件は、ATS34、CRMO7、それ以外、の三通りある。
「それ以外」というのはD2に適した条件になっている。
ATS34とCRMO7はD2の条件よりオーステナイト化の温度が40℃ほど高い。
おそらく14C28Nをそのまま出すと硬さは59~60ぐらいになるんじゃなかろうか。
CRMO7の条件だとやや硬すぎる感もある。場合によっては160℃程度で2時間ほど追加で焼き戻した方がいいかもしれない。60~61程度になると思う。