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2026年7月27日月曜日

懸垂曲線

日本刀の反りは懸垂曲線に近いって説があるらしい。
懸垂曲線って、ロープやチェーンの両端を固定して撓ました時にできる曲線らしい。
放物線にも似た感じだが、ちょっと違う様だ。

大分前にドロップの切っ先の形状は刀に似てると考察した事があった。
ポイント付近の曲率(曲線半径の逆数)は小さいが、刃元側に行く途中の曲率が大きくなる。
狩猟で使ってみると分かるのだが、ポイント付近の曲率が大きくはね上がってると、非常に使いづらくくなる。理由を説明するのが難しいのだが、実際やってみるとそういうものなのだ。

セミスキナーはエッジ全体が懸垂曲線に近いのかもしれない。


ドロップ以外もよくよく観察すくと、基本は懸垂曲線なのかもしれない。
日本刀が懸垂曲線に近いのは力学的なものというより、芸術的直感から来るものなのかもしれない。
ラブレススタイルはもとより、オールドスタイルのナイフのエッジの形状は懸垂曲線に似たものが多い気がするが、これも力学的な理由ではないと思う。やはり日本刀と同じ美意識的なものと、実際の使い勝手の結果なのかもしれない。
ナイフの場合はエッジ形状の他にハンドル形状も関わってくる。
例えばラブレススタイルでもドロップとセミスキナーでは、ハンドル形状は似ている様でかなり違う。これを知らないと非常に使い難くなる。
ナイフデザインの面白い所だと思う。


7/28補足。
ドロップの切っ先部分だが、ポイント付近の曲率が大きくなってはね上がってるとかなり使いづらくなる。これは狩猟をやっていて気がついた。
元々こんな形状だったりするのもたまに見る。
研ぎ減ってこんな形状にもなりやすいので、注意して研ぐべきと思う。


セミスキナーとドロップのハンドルだが、お尻に向けての形状が結構違う。
セミスキナーの場合、下げておかないとスキニングで使いづらくなる。
逆にドロップは下げすぎると使いづらい。ドロップのハンドルは直線的な方がいい。

ナイフショーで握ってみて感触をみるのは、クルマで言ったらショールームでシートに腰掛けただけと同じ事だ。本当に乗り心地を知るには、試乗してみるしかない。
ナイフも触っただけでは分からないんだよな・・・

2025年4月30日水曜日

ラブレスのハーフタングモデル

シース制作のご依頼。なんとか完成した。
しかしラブレスだとは思わなんだ。
なんとも恐れ多い・・・w

5inchのユーティリティのハーフタングモデルって珍しいな。

コピーするつもりはもとからないので、あくまで自分流で作らせてもらった。
しかしラブレスのシースはよく出来ている。
こうやって自分の作った物と比べられたのは勉強になった。

せっかくなのでラブレスを観察してみる。
ブレード長128㎜、全長245㎜。ブレード身幅は約27㎜で鋼材厚は4.7㎜程度の様だ。
一応未使用の様だが長期間放置されていたのか、ブレードに錆びの跡が見られる。ATS34だと思われるが、ピンホールになって結構深い。

結構角が立っていて、ゴツゴツしたハンドル形状になっている。
しかし触った感じはなかなかいい。絶妙なんだなw

ハンドルは多分グリーンキャンバスマイカルタだと思う。ラブレスボルトはステンレスだが、この手のは快削の303なのだろうか?僅かに錆びがある。オーステナイト系ステンレスであっても、快削材は硫黄が含まれるので錆びやすい様だ。

ソングホールパイプはステンレスの様だ。径は1/4インチだと思われる。
最近思ったがラブレスの銀色のパイプはステンレスかアルミを使っている様だ。
とくに座繰りの深い肉厚の白っぽいパイプはアルミだと思われる。ラブレスでニッケルシルバーってのは無いんじゃなかろうか。

この角度で見るユーティリティブレードってカッコいいなw
刃元がリカーブしている様にも見えるが、これは刃付けで削り込んだから?・・・どう作るのが正解なんだろうか・・・

ハンドル前端が11㎜程度で中央の膨らみが17.5㎜、ハンドル後端で18.5㎜程度の厚さ。大きさの割には薄目だが、元々のマイカルタの厚みの制約もあたのかもしれない。

特徴的なフィンガーグルーブがなんともいい感じ。

ブレード身幅に対してハンドル幅が細く見えるが、グルーブがあるからそう見えるだけ。突起の高さでいうとコンベンショナルハンドルと大きく変わらない。
キリオンの部分はブレード身幅に対して5.5㎜程度と低い。

さらに細部を観察。
ブレードはとても細かいサテン仕上げになってる。バフ掛けされて一見ではミラーの様に見える。結構ザックリした仕上げだ。
ハンドル前端面の造形が面白い。ちっと面倒な加工だなw

ハンドルの磨きも粗目の研磨傷が残っていて、これをバフ掛けで仕上げているので、ここもザックリした感じになってる。
ハーフタングモデルは廉価版的なものだったらしいが、確かに全体としてザックリした作りになってる。

長い年月が経っているので仕方がないが、ハンドルの前端は剥がれて隙間が出来てしまっている。

そもそもマイカルタの溝の精度も、あまりよくないのかもしれない。
リカッソを磨く都合もあったと思うが、タングの後端に対してリカッソでは0.1㎜程度薄くなっていた。前端が剥がれてしまった理由は、これもあるのかもしれない。
そもそもラブレスは、ハンドルの接着が剥離してもハンドルはボルトで留まっているので脱落する事はない、道具として使えなくなる事はないのでそれでいいだろ・・・って考えなんだと思う。隙間が気になるなら接着剤で埋めればいい。合理的なラブレスの思想はそういう感じだったんじゃないかと思う。
ちなみに隠しボルトのハンドルはどう考えていたか・・・剥がれたらまた接着すればいいだろって考えだったと思うw

シースもしっかりした作りだ。
おそらくシースに挿しっ放しで何年も放置してあったのではなかろうか。未使用とはいえ長期放置してあっても、使おうと思えばそのまま使えそうだ。

案外ラブレスのシースってザックリした作りでもある。
コバはとくに何も塗っていない様だ。

ミシンで縫っていたそうだが、案外太い糸を使っている。

このシースは毛羽立ちの少ない床面の革を使っている。ラブレスは物によってえらい毛羽立った床面の部分を使っていたりする。
ブルハイドのダブルショルダーは部位による銀面の強度の違いは大きくないので、床面の状態によってシースの耐久性にはあまり影響がない様だ。

国内のカスタムメーカーはポーチタイプでも中子をテーパーに加工する人が多いが、ラブレスはテーパーにはしていない様だ。


裏面は平面的な成形になっている。

表面をナイフ本体に合わせた成形になっている。
ブレードの収まる位置の断面形状はエッジ側が厚くブレードバック側が薄く整形してある。ラブレスのポーチタイプは大抵そうなっている。この部分の考え方は謎だw

収めてみるとカッコいいねw
年月経って単にボロくなるのではなく、なんともいい雰囲気が出てくるのがラブレスの凄いところだな。
今回もいい勉強をさせてもらいましたw



2022年12月30日金曜日

ラムユーティリティ



ラムユーティリティ二本出来上がった。
猟仲間の使ってるラブレスをもとに作った。

大きさは約3.25incある。
ラムユーティリティって小さいイメージがあったが案外大きいんだな。

ニッケルシルバーのヒルトとホールパイプにインチサイズのラブレスボルト。
ハンドルはどちらもグリーンマイカルタでエビ茶色のスペーサーを挟んだ。
キャンバスマイカルタはいつも使う目の方向と逆に使った。この方向だと等高線がはっきり出ないので、成形がやりにくかった。

No.165が3.4㎜厚のRWL34で2.8に削り抜いた。
No.166は3mm厚のCV134をほぼそのまま使った。
RWL34はいつも通り2500番のヘアラインだが、CV134はそこまで磨けなかったので1500番のヘアラインとした。案外1500番のヘアラインもいいと思った。

ラムハンドルは工業デザイナーのトーマス・ラムがデザインしたものらしい。
インプルードハンドルやガーバーのアーモハイドなんかもそうらしい。これらのハンドルは癖のあるデザインだが、案外使ってみると手に馴染むから絶妙だ。

このラムユーティリティはハンドル背側の盛り上がりが特徴なのかもしれない。微妙な反り加減が手に馴染む。

シースはシングルステッチでもいい様な気もしたが、元になったラブレスに習ってダブルにした。
もとよりコピーのつもりはないので、自分なりの考えで作ってある。

折角なのでラブレスと並べてみた。
正確にコピーした訳ではないので、微妙な違いはある。
ラブレスは憧れではあるが、自分にとっての絶対的な理想ではない。
ラブレスのテイストを生かして、自分なりに使いやすいナイフが作れればと思っている。
 

2022年10月1日土曜日

実用されたラブレスナイフ


猟仲間が使っているラブレスのラムユーティリティ。
実用されたラブレスってのも珍しいのかもしれない。

小さいモデルと思い込んでいたが、意外と大きい。
研ぎ減っているので元の大きさが定かではないが、おそらく3.2incぐらいだったのだと思う。

ハンドルはグリーンキャンバスマイカルタだと思うが、長年の酷使で表面に中の繊維が浮き出て独特の手触りになっている。
目の方向が長手方向に直線的な模様が出る方向で使われている。
ラブレスの場合キャンバスマイカルタは背側に波模様が出る目の方向で使う事が多いが、これはそれの直角方向で使ってる事になる。小さいモデルだとラブレスはこの方向で使う事があるみたいだ。
キャンバスマイカルタの目の方向については以下を参照してくだされ。



マークのエッチングは意外と深いみたい。
ブレードはおそらくATS34だと思う。長年の酷使で食孔が無数に付いている。
深い食孔はおそらく巨大な一次炭化物があった場所だと思われる。
日立の技術者に聞いた話では、一次炭化物自体が腐食しやすい訳ではなく、腐食は粒界から起こるそうだ。
腐食が進んで一次炭化物が脱落して深い食孔になるらしい。

番号はあくまでもその時々の管理番号らしいが、この個体はリバースサイドに刻印してある。マークサイドには持ち主の名前が彫られていて、ラブレスからの特別品として作られたものらしい。
刻印はおそらく振動ペンで彫ってある。時代によってはリューターのものもある様だ。
ブレードはバフで仕上げている様だが、面白いのはリカッソに残るバフの目。おそらくブレードバック側からエッジ側に回転方向がいく様に掛けているのだと思うが、バフ目の始まりのところに食孔が見られる。
この食孔は炭化物があった場所だと思われる。バフ目は炭化物が有ったために付いたって事なのかもしれない。

ラブレスボルトの直径は8.7mm程度で、おそらく11/32incなのだと思う。
ラブレスのボルトの大きさは何種類かある様だが、11/32incが多い様だ。
自分の使ってるラブレスボルトも、この大きさで作ってもらった。

3incのケーパーフィンに大きさが似てるんだな。

研ぎ減って80㎜切る大きさになってしまっているが、おそらく元は81㎜程度あったと思う。
ラブレスのハンドルって見た感じ薄く感じるが、実際採寸してみると意外と厚さがあったりする。
寸法では厚みがあっても、背と腹にかけて絞っているので厚さを感じさせない。
単純に丸めるのではなく、メリハリを持たせた造形がなかなか難しい・・・

ハンドル腹の曲率は、ちょうど10incのホイールになるみたいだ。

ぴったりw

前側ボルトの部分の凹みも10incみたいだ。
インプルーブドハンドルなどのグルーブの底って、ちょうどボルトの位置になる。
ラブレスボルトは表面の模様の出方で削った深さが分かる。
ハンドル厚さを設定すれば、ボルトの必要な深さが計算できる。
この事が分かっているとインプルーブドハンドルは作りやすい。

ちなみにブレードのホローも10incなんだな。
ブレード身幅と削るホイール径が決まれば、必要なブレード厚も決まってくる。
ラブレスのデザインって、バーキングみたいなベルトグラインダーで作りやすいデザインになってるんだなw

1㎜厚になる部分はエッジから8㎜程度の位置になる。研ぎ減っているので実際は9~10㎜ぐらいだったのかもしれない。薄い領域が広い形状になっている。
用途からして硬い木をガリガリ削ったり、ましてや薪割りに使うものではない。
想定した用途に必要十分に使えればいい。多分そんな考えだったんじゃないかと思う。
必要以上に丈夫さを追求しても、目的の用途に使いにくいものになってしまうのでは仕方がない。



ステンレスとはいえ錆びる。それでも余程の事がない限り赤錆まみれにはならない。
ブレード面にもよく見るとバフ目が残っている。やはりブレードバックからエッジの方向に掛けている様だ。



折角だから細部の作りを観察してみる。粗探しをする様で申し訳ないが、ラブレスがどんな作りをしていたのかが気になる。
ハンドルとタングの接着面だが、意外と接着層が所々見える。これは未使用のラブレスでも見る事があるので、経年変化という訳ではないと思う。
ベルトのプラテンで仕上げたタング面は、どうしても仕方がない事なのかもしれない。
しかし肉眼で見た場合は大きくは目立たないので、そのぐらいの作りで十分なのかも。




ヒルトはロウ付けの様だ。
前端面はしっかりロウが流れているが、背側はちょっと微妙だ。
色々ラブレスを見る機会があるのだが、ヒルトの後側や背側のロウの流れは微妙に見えるものが多い。ラブレスはそこまでこだわってなかったのかもしれない。
ロウ付けはタングとヒルトの隙間に残ったフラックスにより錆びの原因になる事がある。結構後々問題になった事が多かったらしく、ある時期からはロウ付けをやめて接着剤に切り替えたと聞く。

ヒルトの幅は6.3㎜程度だが、留めているピンは3㎜近い様だ。
結構微妙な位置にピン穴あけているんだな・・・

ラブレスボルトは強固に締め付ける事ができる。
ハンドルは接着してあるが、経年変化で剥がれて隙間ができたとしても、ハンドル材が剥がれ落ちる事はない。隙間ができて多少タングが錆びても、道具として使えなくなる事はない。多分ラブレスはそんな考えがあったんじゃないかと思う。

パイプはアルミ?
ニッケルシルバーやステンレスではなさそうだ。よくは分からないがラブレスってそういうのが多い。

案外ラブレスってざっくりした作りだったりする。
作りの正確さだけで見れば日本のベテランメーカーの方がいい。
しかしラブレスの雰囲気って唯一無二の様にも思う。
この雰囲気は真似しようとしてもなかなか出来ない。本当に真似しようと思ったら、製作環境から真似しないといけないのかもしれない。
そんな事を思いつつ、ラブレスがどうやって作っていたかを想像するのが楽しいw