2025年5月22日木曜日

象牙を使ってみる



ハンドルはペーパーマイカルタを使うつもりだったが、ハンドル材の在庫を漁っていたら象牙を見つけた。大分前に岡山の吉川さんから頂いた物だ。(吉川さん、その節はありがとうございます~)
本物のジェスホーンのNYSPがアイボリーハンドルだから、折角なので使ってみる事にした。
象牙の取り扱い許可は持ってないので売れなくなってしまうが、これは気に入ったので自分用にするw

輪ゴムで束ねて置いといたら、ゴムが腐ってシミになってた・・・orz

厚さが不均一で7㎜前後あったので、削り込んで薄くする。
断面の模様から外側を推測。とりあえず外側がハンドル表面になる様にすればいいのだろうか・・・

微調整は石盤使う。


接着する面にアセトンを染み込ませてからエポキシ接着剤を塗布する。
アセトンが呼水になってエポキシが染み込みやすくなる。
象牙は有機溶剤がよく染みて、白骨化した鹿角ほどではないが、ミクロ的には案外スカスカしている状態みたいだ。


ハンドルの表面になる側は同じくアセトンを染み込ませてから桐油を塗る。
完成後は桐油によるオイルフィニッシュにする。自分は鹿角でよくやっている。
桐油の様な乾性油は酸化重合して樹脂化する。
象牙は含水率が意外と高いらしく10%程度ある様だ。革と同じで完全に乾燥させる事はできない。もし極端に含水率が落ちると、ボロボロと脆くなってしまうのかもしれない。
結局のところ有る程度の含水率を維持しないといけないのだと思う。そう考えると合成樹脂を含浸するのは得策ではないと思える。
ある程度水分の出入りが出来る様にするべきだと思う。それにはオイルフィニッシュがいいのではないだろうか。


基本的にエポキシも天然乾性油の硬化すると僅かに収縮する。
しばらく放置すると色々な方向に反ってくる。
様子を見ながら石盤で平面を出しては、エポキシと桐油の塗布を数回繰り返した。
7㎜ちょっとあった厚みは5㎜程度まで薄くなった。

ハンドルの接着準備。
ボルスターとの接触面を整える。


とりあえず片面接着。
天気がよく適度な湿度の日を選んで接着した。

エポキシが硬化したら外形切り出し。

穴あける。

ドットホックの穴はこの時点であけた。
先にあけてしまうとハンドル接着の位置決めが厄介になるのと、象牙の薄板に10.5㎜の穴をあけるのは恐ろしいので、この時点でやる事にした。
ⅿ4のネジの下穴が3.3㎜だったので、最初3.3㎜の穴をあけて位置決めして、2~3㎜ぐらいづつ広げていった。

ドットホックは10.4㎜の外形だったので10.5㎜の穴にした。さすがにこの大きさの穴あけるのは怖いw

とりあえず今回はここまで。続く~







2025年5月21日水曜日

熱処理から帰ってきた

ジェスホーンのニューヨークスペシャルの続き。
 マトリックスアイダから熱処理から戻ってきた。
RWL34だがCRMO7の条件でやった。この方が硬さが高く粘らないので磨きやすい。それと耐食性も高くなる。実用でも問題ないのだが、コレクション性の高いモデルはATS34もこうしている。

先ずはタングの酸化皮膜をブラストで落とす。
この酸化皮膜は鉄原子が酸素と結合した状態なので錆びの原因になる。ステンレスはCrの不働態被膜により錆びにくいのだが、基地の鉄原子が酸化していると酸素が拡散して錆びになる。
酸化被膜は機械的に除去すると、基地の鉄原子が酸化される前にCrの酸化による不働態被膜が生成されるので、鉄原子に酸素の供給がなくなり錆びにくくなる。
熱処理から戻ってきたらさっさと酸化被膜は取ってしまった方がいい。

硬さ測った。
RWL34はマトリックスアイダのCRMO7の条件だと、硬さは概ね63~64ぐらいになる。
実用で使っても十分粘りはあるので、高温焼き戻しと低温焼き戻しのどちらがいいかはいまだに迷う。

ブレードは1500番を掛けてノートンの1500番でヘアラインを引いた。
自分の場合、磨きは日研の耐水ペーパーを使うが、ヘアラインはノートンの青い台紙の耐水ペーパーを使っている。ノートンは研削力が強い感じがして、これを使う様になってからはヘアラインを引くのが楽になった。以前はヘアライン引くのに半日掛ける事もあった。
但し台紙がちょっと柔らかく、自分のやり方だと合わないので、磨きは日研を使っている。
研削力の違いなのかもしれないが、呼び番手は同じでもノートンの方がやや粗い気もする。

マトリックスアイダで名入れした。
今回はジェスホーンの本物に倣ってリカッソに入れてみた。
名入れは上手くいって、ヘアラインを引き直す必要もなかった。
とりあえずボルスターを取り付ける。
ジェスホーンの本物の画像を見る限り、ボルスターはロウ付けなどせずに接着してピン留めなんだと思う。
いつもならコンクエスト(アルミ粉末の入った金属パテ)で接着するところだが、ヒルトと違って平面度が出ているので、エポキシ接着剤を使う事にした。

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カシメのピンは2.5㎜を4本使った。
実用モデルではないがボルスターが剥がれるのは嫌だ。
ヒルトの部分ってタングが撓むとハンドル材で押されるので、結構応力が掛かる。これは実用していて分かった。
余程小さいヒルトでないかぎり、2.5㎜のピンで二本以上で留める様にしている。

なんとなく形になってきたw
次回から面倒くさい事になったハンドルに続く・・・

2025年4月30日水曜日

ラブレスのハーフタングモデル

シース制作のご依頼。なんとか完成した。
しかしラブレスだとは思わなんだ。
なんとも恐れ多い・・・w

5inchのユーティリティのハーフタングモデルって珍しいな。

コピーするつもりはもとからないので、あくまで自分流で作らせてもらった。
しかしラブレスのシースはよく出来ている。
こうやって自分の作った物と比べられたのは勉強になった。

せっかくなのでラブレスを観察してみる。
ブレード長128㎜、全長245㎜。ブレード身幅は約27㎜で鋼材厚は4.7㎜程度の様だ。
一応未使用の様だが長期間放置されていたのか、ブレードに錆びの跡が見られる。ATS34だと思われるが、ピンホールになって結構深い。

結構角が立っていて、ゴツゴツしたハンドル形状になっている。
しかし触った感じはなかなかいい。絶妙なんだなw

ハンドルは多分グリーンキャンバスマイカルタだと思う。ラブレスボルトはステンレスだが、この手のは快削の303なのだろうか?僅かに錆びがある。オーステナイト系ステンレスであっても、快削材は硫黄が含まれるので錆びやすい様だ。

ソングホールパイプはステンレスの様だ。径は1/4インチだと思われる。
最近思ったがラブレスの銀色のパイプはステンレスかアルミを使っている様だ。
とくに座繰りの深い肉厚の白っぽいパイプはアルミだと思われる。ラブレスでニッケルシルバーってのは無いんじゃなかろうか。

この角度で見るユーティリティブレードってカッコいいなw
刃元がリカーブしている様にも見えるが、これは刃付けで削り込んだから?・・・どう作るのが正解なんだろうか・・・

ハンドル前端が11㎜程度で中央の膨らみが17.5㎜、ハンドル後端で18.5㎜程度の厚さ。大きさの割には薄目だが、元々のマイカルタの厚みの制約もあたのかもしれない。

特徴的なフィンガーグルーブがなんともいい感じ。

ブレード身幅に対してハンドル幅が細く見えるが、グルーブがあるからそう見えるだけ。突起の高さでいうとコンベンショナルハンドルと大きく変わらない。
キリオンの部分はブレード身幅に対して5.5㎜程度と低い。

さらに細部を観察。
ブレードはとても細かいサテン仕上げになってる。バフ掛けされて一見ではミラーの様に見える。結構ザックリした仕上げだ。
ハンドル前端面の造形が面白い。ちっと面倒な加工だなw

ハンドルの磨きも粗目の研磨傷が残っていて、これをバフ掛けで仕上げているので、ここもザックリした感じになってる。
ハーフタングモデルは廉価版的なものだったらしいが、確かに全体としてザックリした作りになってる。

長い年月が経っているので仕方がないが、ハンドルの前端は剥がれて隙間が出来てしまっている。

そもそもマイカルタの溝の精度も、あまりよくないのかもしれない。
リカッソを磨く都合もあったと思うが、タングの後端に対してリカッソでは0.1㎜程度薄くなっていた。前端が剥がれてしまった理由は、これもあるのかもしれない。
そもそもラブレスは、ハンドルの接着が剥離してもハンドルはボルトで留まっているので脱落する事はない、道具として使えなくなる事はないのでそれでいいだろ・・・って考えなんだと思う。隙間が気になるなら接着剤で埋めればいい。合理的なラブレスの思想はそういう感じだったんじゃないかと思う。
ちなみに隠しボルトのハンドルはどう考えていたか・・・剥がれたらまた接着すればいいだろって考えだったと思うw

シースもしっかりした作りだ。
おそらくシースに挿しっ放しで何年も放置してあったのではなかろうか。未使用とはいえ長期放置してあっても、使おうと思えばそのまま使えそうだ。

案外ラブレスのシースってザックリした作りでもある。
コバはとくに何も塗っていない様だ。

ミシンで縫っていたそうだが、案外太い糸を使っている。

このシースは毛羽立ちの少ない床面の革を使っている。ラブレスは物によってえらい毛羽立った床面の部分を使っていたりする。
ブルハイドのダブルショルダーは部位による銀面の強度の違いは大きくないので、床面の状態によってシースの耐久性にはあまり影響がない様だ。

国内のカスタムメーカーはポーチタイプでも中子をテーパーに加工する人が多いが、ラブレスはテーパーにはしていない様だ。


裏面は平面的な成形になっている。

表面をナイフ本体に合わせた成形になっている。
ブレードの収まる位置の断面形状はエッジ側が厚くブレードバック側が薄く整形してある。ラブレスのポーチタイプは大抵そうなっている。この部分の考え方は謎だw

収めてみるとカッコいいねw
年月経って単にボロくなるのではなく、なんともいい雰囲気が出てくるのがラブレスの凄いところだな。
今回もいい勉強をさせてもらいましたw



2025年4月14日月曜日

14C28N

昨年の関の刃物まつりで買ってきた14C28Nを使ってみる。
10C28Mo2との違いが知りたいので、両方で作ってみる事にした。

一番の疑問は焼入れのオーステナイト化の温度が1080℃で行けるという事。
オーバーヒートにならないのか?
アレイマの人に聞くと組織の状態が鍵らしい。

硬さを測ってみた。
若干炭素量が多い事と窒素を少量含有しているので、10C28Mo2よりは硬さは高くなるとは予想していたが、思った以上に高かった。
CRMO7、10C28Mo2はこの系統になる。14C28Nもこれに入る。
420はC量が少ないためにオーステナイト化の温度は低めになるのだが、CRMO7は1%程度Moがあるためにオーステナイト化温度が高めになってる。
14C28NはMoの様な炭化物生成傾向の高い合金元素は含まれないので、オーステナイト化温度は低めだと思っていた。

以下は顕微鏡観察した結果。
600倍は横の画角がちょうど100μmになる。
 
14C28N マトリックスアイダCRMO7の条件 600倍

14C28N マトリックスアイダCRMO7の条件 150倍

14C28N 生材 600倍

14C28N 生材 150倍

10C28Mo2 マトリックスアイダCRMO7の条件 600倍

10C28Mo2 マトリックスアイダCRMO7 150倍


10C28Mo2 生材 600倍

10C28Mo2 生材 150倍

研磨とエッチングが今一であるが、14C28Nの熱処理後の組織は観察した限りではオーバーヒート等の組織の異常はなかった。
10C28Mo2と比較すると、熱処理後は幾分14C28Nの方が炭化物が大きく密度も高い様だ。溶け残った炭化物も多い。オーステナイト化が高くても過熱にならない理由は、この辺にあるのかもしれない。
10C28Mo2,14C28Nとも生材と比較すると、熱処理後は炭化物が固溶している様子がわかる。10C28Mo2は溶け込む量が多く、ぎりぎりオーバーヒートになってない感もある。
エッチングした時の感触では、10C28Mo2の方が若干耐食性がいい様だ。

マトリックスアイダの熱処理条件は、ATS34、CRMO7、それ以外、の三通りある。
「それ以外」というのはD2に適した条件になっている。
ATS34とCRMO7はD2の条件よりオーステナイト化の温度が40℃ほど高い。
おそらく14C28Nをそのまま出すと硬さは59~60ぐらいになるんじゃなかろうか。
CRMO7の条件だとやや硬すぎる感もある。場合によっては160℃程度で2時間ほど追加で焼き戻した方がいいかもしれない。60~61程度になると思う。