2021年9月16日木曜日

刃物の組織

白紙2号の生材の600倍。横の画角が約100μm。

基地の結晶粒界に初析炭化物が網状に連なっている、画像だとはっきりしないが、結晶内はパーライト組織になっている、典型的な過共析鋼の標準組織だ。

鍛接または鍛造して使う事が前提なので、この様な組織なんだと思う。


鍛造後の組織。倍率は変わらず。

網状に連なった炭化物は粉砕されている。パーライト組織も粉砕されて、炭化物は粒状になっている。案外この状態だと焼鈍しをしなくてもいけるのかもしれない。

焼鈍しだが鍛造メーカーに話を聞くと積極的にやる人と、そうでない人に分かれる。

原理的には炭化物を球状化して分布を均一にするために、焼鈍しはやったほうがいいと思われる。

均一に分布した炭化物は、焼き入れのオーステナイト化において粒界をピン止めして、結晶粒の成長を抑える。

炭化物の粒が揃っている事で、基地への炭化物の溶け込み量も均一になる。マルテン化による膨張のムラもなくなるので、焼き割れや焼き曲りも防げると思われる。

球状化焼鈍しについては以前に書いたので、そちらを参考に・・・

http://monosuki12.blogspot.com/2019/10/blog-post_45.html


焼入れ後の組織。倍率はこれも変わらない。
鍛造後に焼鈍しをしてるのだが、都合によりその画像はない。
鍛造後と比べると炭化物が小さくなっている。焼入れにより炭化物が溶け込んだからだろう。
基地の結晶粒も細かく、炭化物も細かく均一に分布している。非常に良い組織になっている。
ナイフや包丁の様な刃物の刃先は非常に薄く鋭利な形状になる。組織や炭化物が粗いと刃先が大きく欠けるやすくなるし、そもそも鋭利に研ぎ上げる事が難しくなる。
基本的に基地も炭化物も細かい方がいい。
とくに炭化物は耐摩耗性に寄与するものだが、基地に対して硬さが非常に高く脆い。
用途にもよるが、粗大な炭化物がある事は好ましい事ではない。

 

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