この前象牙を使ったが、その性質に興味を持った。
ちょっと気になったので調べてみる事にした。
金属顕微鏡を使って組織を観察してみる。
輪切りの象牙があったので、これから試験片を切り出す。表層にはエナメル質が付いてるので、象牙質との違いが見れるだろうか?
比較として白骨化した鹿角も観察してみよう。
久しぶりに金属顕微鏡を引っ張り出してきた。
金属顕微鏡は光軸の途中にハーフミラーが有って、光源の光を対物レンズを通して試験片に照射して反射光で観察をする。金属片は光が透過しないからねw
象牙75倍。
中央付近の線がエナメル質と象牙質の境目。左がエナメル質で右が象牙質となり、右の方が象牙の中心になる。
肉眼だと表層側の象牙質は交差模様が見えるのだが、これは内部の濃淡が透けて見えるためであって、顕微鏡だと表面の組織でしか見えないので交差模様は出ない様だ。
象牙エナメル質600倍。
象牙は緻密で研磨しただけでは組織が出なかったので、硫酸で軽くエッチングしている。
象牙という物は10%弱の水分とコラーゲを主成分とする有機物が30%、残りはリン酸カルシウム(ハイドルキシアパタイト)などの無機物で構成されているらしい。
エナメル質と象牙質の違いは有機物と無機物の割合で、エナメル質の方がより無機物が多く、そのため硬いらしい。
研磨とエッチングが今一で画像では分かりにくいが、観察した限りでは隙間の様な状態は全くなく均一で緻密な感じだった。
象牙は磨くと表面が非常にきれいに仕上がって、金属切粉が入り込むということがなかった。確かにミクロ組織が均質だからなのだろう。
象牙は中心から外層方向に放射状に細管があるらしい。
画像では不鮮明で分からないが、観察するとポツポツと穴の様な感じが見える様な気もすくが、今一はっきりしない。これは顕微鏡の限界かもしれないw
表層を削った状態で、普通にハンドル材としたなら表面になる部分。
肉眼でも見える事があるが、渦巻き模様が無数にある。木材の節に似ているが、渦の中心は穴になってる。
鹿角も骨も基本的には象牙と同じで、水分とコラーゲンとリン酸カルシウムで出来ている。
成り立ちとしては、先ずコラーゲン繊維が成長して、その隙間にリン酸カルシウムが沈着して形成されるのだと思う。
鹿角の節状の部分は樹枝状に発達したコラーゲン繊維の痕跡だはないだろうか。
白骨化鹿角600倍。
節状の部分の中心は穴になっているが、その他の部分んは結構緻密な感じだった。
節状の渦巻きは何かが濃淡となって表れている。白骨化によるコラーゲン繊維分の脱落による微細な穴なのだろうか。白骨化鹿角はエポキシや乾性油が染み込みやすいが、コラーゲン繊維が腐食で無くなり、ミクロな隙間だらけの状態なのかもしれない。
髄の部分はスカスカな穴だらけ。
髄の部分はよく血管の通ていた跡だと言われるが、どちらかというとコラーゲン繊維を形成する時の幹の部分と考えた方がいいのかもしれない。
髄から離れた表層に近い部分。
この方向でも渦巻き模様が出てる。おそらくコラーゲン繊維の比較的太い枝の部分に相当するのだろう。
鹿角は磨いていると金属切粉が入り込んでなかなか取れなくなる事があるが、この節の部分が原因なのかもしれない。
ついでで見てみた。
観察した限り隙間の様なものはほとんどなかった。
木材の成分は大まかにはセルロース、ヘミセルロース、グアニンの三つで構成されてるそうだ。
見える組織がどういう意味があるのかは分からないが、非常に緻密な印象を持った。
アイアンウッドは化石化したものの様に言われる事があるが、木材である事は間違いない。珪酸分が沈着して石化してる様なものではないと思う。
分かりにくいが黒っぽい部分がリネンの繊維で、白っぽい部分が樹脂の部分。
肉眼だと繊維が交差してるのが見えるのだが、これも内部が若干透けるからの様だ。
顕微鏡だと内部の透けた部分はピントが合わないので表面だけしか見えない。
研磨の状態と平行が出てなかったので画像は判然としないが、案外繊維の部分も緻密な状態になっている。繊維にも樹脂が十分染み込んでいるからなのだろうか。
マイカルタの厄介なところは、粗削りで繊維が毟れた状態になるので、その後の研磨を丁寧に行わないと最後まで繊維の毟れが残ってしまう。きれいに仕上げようと思うと案外手間が掛かる。
これも黒っぽい部分が繊維で、白っぽい部分が樹脂になる。
ブラックキャンバスマイカルタ600倍。
繊維のサイズの違いだけで、タンリネンと本質的には変わらない様だ。