あんこが死んだ。
昨日仕事が終わって事務所を出ようとした時、床に弱ってへたり込んでいた。
前から風邪気味だったのだが、どうも今週に入ってから悪化していたらしい。
あくる日になったらお医者に連れてこうと、とりあえず水分補給と思い口元を湿らせて家に上がった。
今朝はたまたまちょっと早く起きたので、早めに事務所に降りてくと、あんこは定位置の階段下の穴倉の様な奥にいた。
しかし呼びかけたが反応がない。
もうすでに硬直していたが、僅かに体温が残ってた。
考えが甘かったな・・・もっと早く気が付いてやればよかった。
何度も死にかけた事があったが、いつもそれを乗り越えて元気になってた。今回も大丈夫だろうなんて思っていた。
11年前の夏に保護してから、ずっと工場長のめいと一緒だった。
大病で後ろ足に後遺症が残ったり慢性的な涙目になったが、健康で元気に生きてくれた。
あんこの写真を探したが、あまりいい写真がなかった。
いつも涙目で表情が分かりづらいってのがあったし、そもそもあんこはおいらには全然なついてなかったので、なかなか写真を撮るチャンスがなかったんだよな・・・
工場に車がない時は放してやってたが、あんこは臆病な割に冒険心が強く、変なところに隠れて困ったもんだった。
いつもめいと一緒に事務所の前にいたから、ご近所の人達からは「めいちゃん、あんちゃん、おはよう~」と声を掛けてくれてた。
看板ヌコとしてよく働いてくれたよな。
うちの三匹のヌコどもの中で、あんこの毛並みは一番滑らかでよかった。
毛が細くて柔らかかったんだな。
実はうちの親父殿は一昨年の暮れに亡くなったのだが、今頃あんこも親父殿にあの世で会ってるだろうか・・・
親父殿が野良ヌコに餌付けしなかったら、あんこを保護する事もなかったろう。
めいとはいつも仲良く一緒にいた。
時折めいがあんこに噛みつく事があったが、あんこはめいが寝てる間に仕返しをするのか、めいは眉毛が噛み切られていつも薄くなってた・・・
めいは工場勤務が独りぼっちになってしまった。
あんこが死んでしまった事を分かっているのだろうか・・・
あんこ、今までありがとう。安らかに眠れ・・・