前回マトリックスアイダで、ATS34の条件、CRMO7の条件、magnacutの条件(D2か?)、で熱処理したものを再度マトリックスアイダでCRMO7の条件で熱処理した。
通常二度続けて焼入れするとオーステナイトに過剰に炭化物が溶け込んでオーバーヒートの組織になりやすい。
しかしもともとオーステナイト化の温度が足りないのなら、二度焼入れする事で適正状態に近づけるのではないかと考えた。
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二度焼入れする事で確かにいくらか硬さは上がったが、思ったほどではなかった・・・
前回ATS34の条件が56.9だったので、硬さが上がる事は間違いない。しかしそれでもまだオーステナイトに固溶する炭素量は十分でないのかもしれない。
組織を観察しようとエッチングしたのだが、何故かなかなか腐食しない。
一回目の熱処理では普通にエッチングできたのだが、二回目はえらく腐食しにくかった。
もしかしたらCrの基地への固溶量が増えて耐食性がよくなっているのかもしれない。
そうだとするとオーステナイト化温度が足りないのは、硬さの問題だけでなく耐食性にも影響があるのかもしれない。
以下に組織観察した結果を貼る。
600倍の横の画角は約100μm。
エッチングに手間取って何回も研磨しなおさないといけなかった。研磨状態が悪くて今一な写真だが勘弁してほしいw
一回目ATS34の条件→二回目CRMO7の条件、600倍。参考までに。
magnacut生材、600倍。
magnacut生材、150倍。
三通りの熱処理条件になったが、概ねどれも大きな違いはなかった。
写真では研磨状態が悪くてはっきりしないが、基地の異常な粗大化や炭化物の溶け込みすぎは観察のかぎりでは見られなかったので、熱処理としては適正の範囲なのだと思う。
ATS34→CRMO7の順はATS34の条件が高温焼き戻しなので、若干マルテンサイトからの炭素の吐き出しがあるため、僅かに硬さが低いのかもしれない。
CRMO7→CRMO7とmagnacut(D2?)→CRMO7の条件は誤差の範囲だと思う。
CRMO7の条件を二回続けるのが現実的な気がするが、はたして費用対効果を考えるとどうなんだろうか・・・
硬さだけで考えれば僅かに0.6~0.7程度の上昇しかないが、耐食性にはいい結果が得られるかもしれない。
究極的にはソルトバスで適正のオーステナイト化温度と保持時間を指定して、冷却も歪みを覚悟して油冷でやるべきなのかもしれない。
しかし肌荒れや薄く作る事ができないのであれば、やはり真空炉でやるしかない。
magnacutって厄介な鋼材だな・・・
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