2023年11月29日水曜日

高温焼き戻しの理由





RWL34のドロップは6年前に二本作って猟で使っている。
一本は高温焼き戻しで、もう一本は低温焼き戻しで熱処理した。
高温焼き戻しの方が靭性に有利と思ってきたが、使っていると低温焼き戻しでも遜色ない様に思えてきた。

スーパーゴールドⅡも高温焼き戻しと低温焼き戻しで使えるのだが、こちらの場合は硬さが欲しいため低温焼き戻しで使っている。スーパーゴールドⅡは低温焼き戻しでも十分な粘りがあるのは使っていて分かった。

粉末鋼というのはそもそもが炭化物が細かく、溶製鋼に比べると靭性には有利の様だ。
RWL34は低温焼き戻しの場合硬さはHRcで64近くになるのだが、硬すぎる感じもなく欠けやすいという事もない。(高温焼き戻しの場合は61~62ぐらい)

ATS34の場合は高温焼き戻しで60ちょうどぐらいで、低温焼き戻しだと63ぐらいになる。
ATS34の高温焼き戻しは確かに粘るのだが、結局のところ硬さの低い分、粘る様に感じるだけだったのかもしれない。

 
ラブレスがATS34を高温焼き戻しで使っていたのではないかという事は以前ブログで書いた
この本の中で154CMの熱処理条件が書かれている。そこにはオーステナイト化温度が1079℃で保持時間30分、窒素ガス冷却後-196℃のサブゼロ、538℃の焼き戻し2時間二回とある。
ラブレスが高温焼き戻しで使っていた事は間違いないと思う。

ラブレスは何故高温焼き戻しで使っていたのか?
自分はてっきり靭性に有利だからだと思っていた。
しかし「ナイフ鋼材オタク」のブログや著書を読むと、高温焼き戻しでの靭性は高くなる訳ではないという事が分かった。
やはり硬さが低くなる分で粘る様に思えただけの様だ。
そう考えるとラブレスが高温焼き戻しで使っていた理由は、後の加工で温度を加えても大丈夫なためではないかと思えてきた。

ラブレスはヒルトにロウ付けをしていたが、あれは高温焼き戻しなら影響はほとんどないだろう。
ロウ付けはどうしても低温ロウを使ったとしても、母材の温度は200℃程度にあげる必要がある。低温焼き戻しでは影響があると思う。しかし合金鋼は短時間なら影響は少なく、さらに焼き戻しを加えたと考えるなら、あまり神経質に考える事もないのかもしれないが・・・

もう一つ考えられるのは、ラブレスは熱処理後の仕上げを、ほとんど機械を使って行っていたという事から、ブレードの加熱に対して都合がよかったのかもしれない。
仕上げの研磨のベルトグラインダーと羽布は結構熱が出る。
結局これが高温焼戻しを使った理由だでたんじゃないかと思う。




0 件のコメント:

コメントを投稿