2025年11月5日水曜日

鋼材の比較

使った事のある鋼材を、硬さ、耐磨耗性、耐食性、組織微細、靱性の項目に、五段階に評価してみた。耐磨耗性、耐食性、靱性については主観である。

組織写真は600倍で、横の画角が約100μmになる。


ATS34

硬さ   3

耐磨耗性 3

耐食性  3

組織微細 2

靱性   3

高温焼戻しで60、低温焼戻しだと63程度まで上がる。オーステナイト系温度は高目。

十数μmの共晶炭化物があるため、精緻に刃先を研いでも使用中に脱落して刃先の劣化になる。

耐食性は低温焼戻しの方がいいが、高温焼戻しでも実用上は問題ない。

突出した部分はないが、概ね平均的。

D2
硬さ   4
耐磨耗性 3
耐食性  1
組織微細 1
靱性   2

比較的オーステナイト化の温度が低い。高目で熱処理すると、基地の結晶粒肥大化になる。
30μm近くの共晶炭化物が存在する場合がある。このためミクロンレベルの靱性は比較的低くなる。精緻な刃付けにはむかない。
C量が多いため、Crが炭化物に食われ基地に固溶する量が減り耐食性は悪い。
硬さがある程度あり粘りも少ないので、ザラッと研ぐには使いやすい。

RWL34
硬さ   4 
耐磨耗性 3
耐食性  3
組織微細 3
靱性   4

低温焼戻し、高温焼戻しとも、ATS34より1程度高くなる。
炭化物は顕微鏡観察で見える範囲では4μm程度。Vの含有量は少ないので炭化物自体はそれ程硬くなく、そのため耐磨耗性は大きくない。
巨大な炭化物がないので、ATS34より若干耐食性はいい。
ATS34の欠点を解決した鋼材といえる。

10C28Mo2
硬さ   2
耐磨耗性 2
耐食性  4
組織微細 5
靱性   5

共晶炭化物がなく、炭化物の量が少なく細かい。炭化物は大きくても1μm程度。研ぎあげれば精緻な刃が付く。炭素鋼並みに組織は細かい。
炭素量を抑えて基地に固溶するCr量を多くする事で耐食性をよくしている。
炭化物量が少ないのでオーステナイト化で溶け込むC量は少なく、硬さは低めになる。概ね60ぐらい。

14C28N
硬さ   3
耐磨耗性 2
耐食性  4
組織微細 5
靱性   5

10C28MO2より炭化物量が多く、大きさも僅かに大きい。
硬さは10C28MO2より1程度高い。
 耐食性と靱性は10C28MO2より幾らか低くなると思われるが、実質上はほぼ変わらない。
10C28Mo2ほどの組織の細かさが必要ないならば、これの方がバランスがいいかもしれない。中研程度までで使うなら十分だろう。

SPG2
硬さ   3
耐磨耗性 4
耐食性  4
組織微細 3
靱性   4

真空炉の気体冷却では硬さが僅かに低くなる。高温焼戻しで60程度、低温焼戻しだと61ちょっと。
炭化物は顕微鏡観察で3~4μm程度。Vにより炭化物は硬い。耐磨耗性は高いが、S30Vほどではない。しかしその分、靱性はやや高い。
耐食性は比較的よく、高温焼戻しでも実用上問題ない。

S30V
硬さ   2
耐磨耗性 5
耐食性  2
組織微細 3
靱性   3

オーステナイト化が高い必要があり、真空炉の気体冷却では硬さが出にくい。低温焼戻しで60、高温焼戻しで59程度。
炭化物はVにより硬く量も多いので、耐磨耗性は非常にいい。観察では3μm前後で分布しているが、密度か高く繋がっている部分も見られる。そのためか靱性はやや低い。
炭化物に食われるCr量がやや多いため、耐食性も若干低い。
手で研いで使うより、動力機械で刃付けして使う方がいと思う。

ZDP189
硬さ   5
耐磨耗性 3
耐食性  1
組織微細 3
靱性   1

炭化物の多くがCrによるため、オーステナイト化温度がやや低め。D2と同じぐらい。
Cr炭化物が主体のため炭化物自体による耐磨耗性は高くないが、基地の硬さがあるためそこそこの耐磨耗性になっている。
炭化物は概ね3~4μm程度で観察され、密度が非常に高い。このため基地の硬さも高い事もあり靱性は比較的低い。
Cr量に対しC量が多いので、基地に固溶するCrが少なく耐食性は低い。

VANAX
硬さ   3
耐磨耗性 4
耐食性  5
組織微細 4
靱性   4

オーステナイト化温度が高目である必要はあるが、V含有が多い粉末鋼の割には真空炉の気体冷却でも硬さは出やすい。61程度。
他の粉末鋼より炭化物は幾分細かい。Vによる窒炭化物の様で、硬さがある程度あるので耐磨耗性はいい。細かいため靱性もよい。概ね3μmより小さい。
C量を抑えているので、Crが基地に多く固溶するため、耐食性はステンレス鋼のなかでは非常にいい。

H1
硬さ   1
耐磨耗性 1
耐食性  5
組織微細 5
靱性   5

基本的にはオーステナイト系ステンレス鋼を、加工誘起のマルテン化で硬化させるらしい。硬さは57程度。耐熱性がある様に言われるが、実際は加熱すれば硬さは落ちる。
Cはほとんど含まないので、炭化物はほぼ存在しない。そのため耐磨耗性は非常に低い。硬さが低く炭化物がないので靱性は高い。
基地の結晶粒は大きい様にも見えるが、炭化物がないので、相対的に組織は細かく感じる。
Cを含まないので含有するCrのほとんどが基地にあるため、耐食性は非常に高い。
オーステナイト系ステンレス鋼特有の問題で、組織中に僅かにデルタフェライトが存在する。これは基本的にフェライト相なので柔らかいため、刃先の劣化の原因になる。炭化物がない事もあわせてH1特有の切れ味の原因になっていると思われる。

CV134 (11/6追記)
硬さ   4
耐磨耗性 5
耐食性  2
組織微細 2
靱性   3

共晶炭化物はD2とATS34の中間的な大きさで、その密度は非常に高い。Vにより炭化物の硬さもあり耐摩耗性はとても高い。
大きく硬い炭化物のため、研ぎ上げて精緻な刃付けには向かない。ザラっと研いでザクザク切る用途に向く。手研ぎより動力機械の刃付けの方がいいのかもしれない。
V含有の多い粉末鋼の様な気体冷却で硬さが出にくくなる事はないので、真空炉の熱処理で十分いける。
D2の熱処理条件でも十分硬さは出るが、オーステナイト化温度を高めにした方が硬さと耐食性で有利になる。64近くの硬さが出るが、若干焼き戻し温度を高めて62程度で使うのがいい。
二次硬化するので、高温焼き戻しでもいける。その場合硬さは60程度。耐食性はさらに落ちるが、高負荷な使い方にはいいかもしれない。

2025年11月3日月曜日

りんごジャム作る

 猟期も近いので昨日諏訪大社に行って、鹿食免を貰ってきた。

新入りヌッコどもを連れてった。
神社は犬猫は入れないので、クルマで留守番させてたらドアハンドルを噛られた・・・orz

土産屋さんで紅玉あったから買ってきた。
ジャムにしてみる。
全部で約1.3kgだった。

芯を取って適当に刻む。
皮付きの方が色合いがよくなる。


グラニュ糖をまぶして煮はじめる。焦げない様に少量水を加える。あとは実から水分が出てくる。グラニュ糖は650g使った。

弱火で煮込んで透明感が出てきたら出来上がり。

湯煎したビンに詰め込む。
無菌状態になるので、常温でも長期保存できる。
僅かに空気が入るので酸化して黒ずむが、開封しなければ数年間は保存がきく。ビン詰めは偉大だw

出来上がり~
皮の赤みが今一だったが、まあまあの色合いになった。
紅玉は酸味があってジャムにはいい。
りんごジャムは簡単に出来ていいなw


2025年10月25日土曜日

ニューヨークスペシャルの比較

コンテストから戻ってきた。


この前作ったNYSPは、マトリックスアイダに販売をお願していた。有難い事にすぐに売れていた。

Xでコンテストに出したNYSPと比較してみたかったと書き込んだら、御買い上げ頂いたお客様がうちに送ってきてくれた。ありがたや~


コンテストに出したものは謂わば試作みたいなものだったので、製作途中の記事でも書いたが、形状がジェス・ホーンのものとはかなり違いがあった。
横哲さん秘伝のラブレスの本物に近い図面から、ハンドルだけを延長した感じで作った。
これだとフォルダーにした時に、畳んでもブレードが収まりきれない。これは作ってる途中で気がついた。
ハンドルをそのまま延長しただけなので、ハンドル形状がちょっと間延びした印象にもなってしまった。

ブレード形状も大分違う。ジェス・ホーンの方がスエッジが短い。

一本目はブレードのヘアラインは1500番でヒルトは1000番で作った。
二本目は1000番と800番とした。
二本目の方がヘアラインが際立っていい様だ。
やはり細かければいいというものではないんだな。



こう見るとハンドル形状の違いが分かりやすいか。
ハンドル突起の部分は何種類かのグラインドホイールで成形する様だが、ジェス・ホーンもラブレスオリジナルとほぼ同じ作りの様だ。

ラブレスに寄せた形状も面白いかもしれない。ラブレスオリジナルの形状で、ブレードの削りをジェス・ホーンでやってみるのも面白そうだ。そのうちJHファイターシリーズとしてやってみたい。


二本目は少し細い糸で縫ったのだが、もうちょっと細くしてもいいのかもしれない。
ジェス・ホーンオリジナルに倣ったが、やっぱり不思議なシースだw


ジェス・ホーンのNYSPなんて理解してもらえるんだろうかってのが心配であったが、寸評を見る限りでは杞憂であった。
突っ込みどころのフォルダーにしたら畳めないじゃないかという指摘がなくてよかったw


マトリックスアイダで買うと化粧箱に入ってくるんだなw
自分でも直接販売する事はあるが、こういった化粧箱は用意してないので、申し訳ないけど簡単な梱包で勘弁してもらっている。

今までに貰っ楯を引っ張り出してきた。
2006年ぐらいからコンテストに出す様になって、8年前に出したのが最後だった。
久しぶりに出して、大賞を貰えるとは思いもしなかった。
厳密にはラブレススタイルでもないし、近年のコンテスト受賞作と比べれば地味な題材だった。基本的な作りの部分を評価してもらえたと思っている。
審査員の一人にお聞きしたら「画像より実物がよかった」との事で嬉しかった。
JKGには本当に感謝です。

NYSPお借りしたお客様にも感謝です~、ありがとうございます!

2025年10月18日土曜日

貰っちゃいました。

 

JKGのナイフショー行ってきた。
今年はコンテストに出品していた。
8年振りに出したが、思いもよらず大賞を頂いてしまった。

https://jkg.jp/2025/10/18/2025-contest-result/
ブログで製作記を書いたジェス・ホーンのニユーヨークスペシャル。
正直この題材で大賞を貰えるとは思ってなかった。でも基本的な所を評価してもらえたんだと嬉しく思う。
今までコンテストではいい勉強をさせてもらった。jkgの皆さんには感謝です。
それと今回題材を拝借したジェス・ホーン氏にも感謝しますw


2025年10月5日日曜日

畳めないホーン

Neo Stiff Horn 二本出来た。

先ずはLHLから。
元ネタはこれ。
たまたま図面を見る機会があって、それを元に外形を作った。

ブレードはRWL34の2.6㎜厚を使って、熱処理は低温焼き戻しにした。
ヘアラインは1000番で引いた。
ジェス・ホーンのオリジナルはブレード厚は2.4㎜を僅かに欠ける程度の様だ。

ハンドルは古いペーパーマイカルタに、エビ茶色の薄いスペーサーを挟んだ。
ボルスターとピンとパイプはニッケルシルバーを使った。
ペーパーマイカルタはデッドストック物で、表面がいい具合に焼けていた。この焼けが残って面白い色合いになった。磨いて艶も出て質感が非常にいい。

ブレードは普通に平造りなら簡単なのだが、ジェス・ホーンのオリジナルが微妙に鎬があるのでそれに倣った。これが非常に面倒くさいw
鎬のなくなった辺りからブレードバックが面取りされて丸められるのも面倒だった・・・

元々がフォルダーなので、ハンドルは薄く平面的な造形になっている。
この大きさだと、案外このハンドル形状も使いやすくていい。

リカッソに名入れした。案外これもいいな。
ボルスターは800番でヘアラインを引いた。

当初最中構造のシースにしようと思ったが、作ってるうちに今一だったので、面倒だから普通にポーリタイプにした。
結果的にはこれでよかった様に思う。
実用できるホーンのモデルがコンセプトの一つでもあるので、使いやすくていいのではないだろうか。

もう一つはスモールファイター。

これもブレードは2.6㎜厚のRWL34で、低温焼き戻しで使った。
ファーター系はフラットグラインドの場合、どうしてもブレードベベルが鈍角になるが、ジェス・ホーンの削りだと基本平造りなので、実用に使っても案外切れていいと思う。

このハンドルもデッドストックの古いペーパーマイカルタを使っている。
元々薄いマイカルタなので。厚さを稼ぐ意味もあって薄いエビ茶色のスペーサーを挟んでいる。このペーパーマイカルタは良かったので何枚か確保したが、薄いのが難点だ・・・
ボルスターとピンとパイプはニッケルシルバーを使っている。
たまたま5㎜径のニッケルシルバーのパイプを持っていたので使っているが、ジェス・ホーンはアルミのパイプを使っているらしい。そのうちニッケルシルバーのパイプの手持ちが無くなったら、自分もアルミに代えようと思っている。

以前はコの字に溝切ったヒルトとして作ったが、今回は貼り合わせのボルスターとした。
ボルスターは強度的にどうか?というのがあったが、これでも問題はなさそうだ。

以前はバックベベルに名入れしたが、今回はリカッソにしてみた。ぎりぎりいけるw

ウォレットタイプのシースにしようと途中まで作ったが、やっぱりやめて普通にポーチタイプにした。
ポイントが非常に薄いので高負荷な使い方はできないが、案外実用に使ってもいいと思う。
釣った魚の腹出しなんかにいいか?
鳥猟なんかにも意外といいかもしれない。

フォールデングナイフは内部に汚れが入ると始末が悪いが、フィックスド化すればそれを気にせず使えるだろうってのも、Neo Stiff Hornのコンセプトの一つ。
折り畳みナイフはコンパクトになるのが利点だが、シースナイフでも小さく細身ならば携帯には不便はない。
ジェス・ホーンのモデルは案外使い勝手がそうだから、このシリーズは続けてみようと思う。

 

2025年9月25日木曜日

うちのヌッコども


 新入りヌッコどもは今月の14日でうちに来て一年になった。

200gちょっとだったのが、今はあんこが4.7kgにあずきが4.45kgと、あっという間に中猫になった。この勢いだと大猫になってしまうのだろうか・・・

小さい頃からクルマに乗せていたので、何処へでも連れて歩ける様になった。
あんこは男の子だけあって、大抵の事では動じない。

あずきは女の子だからか、ちょっと繊細な気質の様だ。それぞれ性格が微妙に違う。




工場長のめいは今月の3日で17才になった。
いまではすっかり爺さんヌッコになった。
一日ほとんど寝て過ごしている。甲状腺の数値を維持するのにメルカゾールを処方されているが、とりあえず健康そうだ。

当初はヌッコ三匹になってどうしたものかと思ったが、案外なんとかなるものだw
大猫の爺様と中猫が二匹。大猫にならなくていいから、このまま中猫でいてくれ・・・w