2020年10月13日火曜日

研ぐ

 ステンレス鋼製のナイフって大抵の場合刃先だけ小さく研ぐ、いわゆる小刃研ぎって方法で刃が付いている。

ステンレス鋼は炭素鋼に比較して耐摩耗性や粘りがあるため、和式刃物の様な広い面を研ぐいわゆるベタ研ぎに適さないからってのがある。

小刃研ぎは研ぎ減らす量が少ないので刃付けしやすいのが利点だが、面が小さい故に鋭く滑らかに研ぎ上げるのは意外と難しいのかもしれない。

砥石を使って手で研ぐには、基本は角度を一定に保つってのがあるが人が手で研ぐ以上、微妙にぶれるのは仕方がない。むしろ小刃研ぎでも小刃の面は多少曲面になってもかまわない。

重要なのは刃先が砥石に当たる時に力を入れすぎない事。小刃研ぎは狭い面を研ぐので面圧が掛かりすぎてしまう傾向がある。

面圧が掛かりすぎると刃先が弾性変形するし、砥石自体も微妙に弾性変形する。これは刃先が砥石にめり込む様な状態になり、刃先は鋭くならずに丸まってしまう。いわゆる「丸っ刃」って言うのはこの様に出来るのだと思う。

小刃研ぎのみでなく炭素鋼の蛤刃をベタで研ぐときにも言えるが、刃先が砥石に接触するのを意識して力を抜いて軽く研ぐのが、鋭い刃先を形成するためのコツだ。刃先の形成は研ぎ減らして行く事にあるが、急ごうとするあまり力を掛けすぎてはいけない。


先端の切刃から刃体まで同じ角度で研ぐ様な鉋や鑿って、いまだに炭素鋼が主流なのは、やはりステンレス鋼から比べると研ぎやすいからなんだろう。

硬さが出しやすくそこそこの耐摩耗性ってのは炭素鋼に分がある。軟鉄に刃金を鍛接するのも、柔らかく減りやすい軟鉄は研ぎやすさにつながるってのもある。


ステンレス鋼のコンベックスの構造って自分は否定的に見ている。ステンレス鋼を広い面積をベタで研ぐのは辛い。

自分はほとんどフラットグラインドで作るが、なるべくブレードは薄作る様にしている。用途に合わせて剛性に問題ない程度に、なるべく薄く作るべきだと思っている。

研ぎ減った場合はステンレス鋼でも小刃はコンベックス状に研いでしまえばいい。薄いフラットなら、初めからコンベックスよりは研ぎやすい。

よくコンベックスグラインドは鋭い刃付けが出来るって言われるが、あれはベタで研ぐので面圧が掛かりすぎる事なく刃先を研ぐ事が出来るからってのがある。刃体が刃先のガイドにもなるので、鋭い刃先を形成しやすい。


自分の場合、刃付けは砥石で手で研ぐ。多くの人はそうやって研いでいるだろうから。

機械で研いで使ってるなんてのは、ナイフメーカーぐらいじゃなかろうか。

でも鋼種によっては機械で刃付けした方がいい場合もあると思う。S30Vの様な硬いバナジウムの炭化物がジャリジャリした鋼種は、刃先に炭化物が並ぶ様に機械で研ぐとえらく長切れする刃が付くのかもしれない。その辺の話は尾上先生の「刃物のはなし」に詳しい・・・


まあ研ぎ方なんて人それぞれだし、どの鋼種を選ぶかも使い方や好みの問題だ。

重要なのは自分にとっての用途に必要十分に使えるかどうか。

思った様に切れる事が切れ味がよいって事なんだと思う。



 

 

 

 

 

2 件のコメント:

  1. 自分の切りたいものが、切りたい様に、切れれば
    それでおkだと思う。

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